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三叉神経痛とは?
三叉神経痛とは、脳神経の1つで、顔の知覚を脳に伝達する働きである三叉神経によって支配される領域に、鋭く激しい痛みが生じる疾患です。40歳以上の女性に多い疾患で、別の疾患を原因として発生する症候性三叉神経痛と、原因となる疾患が明らかでない特発性三叉神経痛に大別されます。
三叉神経について
三叉神経は、その名前の通り根元から3つに分かれる神経で、上から第1枝(眼神経)、第2枝(上顎神経)、第3枝(下顎神経)と呼ばれる神経に分かれ、それぞれが顔の上、中央、下の部分の知覚を伝えます。
第Ⅰ枝眼神経
第1枝である眼神経は、おでこや眉間、眼瞼(まぶた)や目の角膜の皮膚感覚をつかさどる神経です。感覚神経であるため、物を見る機能や、眼球を動かす機能はありません。
第2枝上顎神経
第2枝の上顎神経は、頬や上唇辺りの皮膚感覚を司る神経です。
第3枝下顎神経
第3枝の下顎神経は、下顎や下唇、耳介や鼓膜などの皮膚感覚を司るだけでなく、咀嚼筋(そしゃくきん)という顎の筋肉の運動を支配していることから、感覚神経と運動神経の両方の役割を果たす神経です。
このうち三叉神経痛では、第2枝の上顎神経と、第3枝である下顎神経に症状が出ることが多いですが、第1枝の眼神経にも決して少なくありません。このことから頬から下顎の範囲にかけて鋭く刺すような、歯痛と間違うような痛みが生じた場合は、三叉神経痛を疑います。また、第1枝の眼神経の痛みは、片頭痛とよく間違われます。
三叉神経痛の症状
三叉神経痛の主な症状には以下のものなどがあります。
・顔の片側、一部に刺すような、または電気が走ったような鋭い痛みが生じる
・食べ物を噛んだ瞬間、顎の辺りから目の奥に激痛が走る
・歯磨きをしたら口内に痛みが生じる
・洗顔時や、顔に風が当たる程度の刺激で顔に痛みが走る
など
痛みの性状としては、「鋭く刺すような痛み」「キリでもまれるような痛み」「電気が走ったような痛み」などと表現されることがあり、非常に辛い痛みが現れます。三叉神経痛で生じる痛みは、人が感じる痛みの中でも上位の痛みであると位置づけられており、治療方法のなかった時代には、三叉神経痛を苦に自ら命を絶つこともあったと言われているほどです。
痛みの持続時間に関しては、間欠的(痛む瞬間とそうでない期間がある)であったり、持続的な痛みであったりと様々です。顔の一部にトリガーポイントと呼ばれる痛みを誘発する点があり、顔を触る、顔を洗う、顔に風が当たる、食べ物を咀嚼するといった刺激によって痛みが生じることもあります。
三叉神経痛の主な原因
三叉神経痛の主な原因には、以下のものなどがあります。
症候性三叉神経痛の原因
別の疾患によって生じる三叉神経痛(症候性三叉神経痛)の原因としては、脳幹部腫瘍や脳動静脈奇形、水痘-帯状疱疹ウイルスなどの感染症、副鼻腔炎、外傷、多発性硬化症などがあります。
・脳幹部腫瘍(脳幹と呼ばれる部位にできた腫瘍)
・脳動静脈奇形
・水痘-帯状疱疹ウイルスなどの感染症
・副鼻腔炎
・外傷
・多発性硬化症
など
特発性三叉神経痛の原因
原因となる疾患が明らかでない三叉神経痛(特発性三叉神経痛)の原因として考えられているのが、頭蓋内での微小血管による三叉神経の圧迫です。頭蓋内を走行する上小脳動脈などの血管が動脈硬化を起こすことで蛇行するようになり、結果的に三叉神経を圧迫して発症すると考えられています。
三叉神経痛の検査方法
MRI検査
MRIで脳腫瘍や脳血管奇形、多発性硬化症のような脳病変による症候性の三叉神経痛ではないことを先ずは確かめる必要があります。同時に三叉神経の走行部位を細かく描出する検査方法(CISS/FIESTA)を行うことによって、三叉神経を圧迫する血管がないか評価します。
CT-血管造影検査
血管内に造影剤を流して撮影することで、三叉神経を圧迫する血管を明確に排出することができます。CTではMRIのような情報を得られず、三叉神経痛の診断には有用ではありませんが、手術前には必要となります。また副作用のある血管造影検査も得られる情報がなく、三叉神経痛の診断、治療に用いることはありません。
特発性三叉神経痛の治療方法
症候性でない、特発性三叉神経痛の主な治療には、以下のものなどが挙げられます。
なお、手術が必要な場合には、連携病院にて、この手術の豊富な経験をもつ理事長が担当医として手術を行うことが可能です。理事長はこの本邦における、この手術に関する学会の会長を努めました(第26回日本脳神経減圧術学会 2024年 札幌)
薬物療法
通常の鎮痛薬は無効ですが、脳に作用させる抗てんかん剤(カルバマゼピン)により脳神経の興奮を抑制することで、三叉神経痛を軽減、コントロールさせます。また神経原性疼痛に対する薬剤が効果のある場合もあります。
神経ブロック(ペインクリニック)
薬剤魂トールが困難場合は、X線透視下や超音波ガイド下で三叉神経領域に麻酔薬を注入する手法や、高周波熱を与えて神経を凝固・破壊する手法などがあります。疼痛の軽減が一定期間得られますが、一方顔面の知覚障害(しびれ)を生じることが少なくありません。
ガンマナイフ(定位放射線治療)
頭蓋内の三叉神経の根本に強い放射線の束を集中照射することで三叉神経を変性させ、鎮痛を得る方法です。60~80%の患者さまで疼痛の軽減が得られますが、顔面の知覚障害(しびれ)を生じることもあります。ガンマナイフ施設で2~3日の入院が必要で、年月の経過とともに効果が減弱することが少なくありません。
外科的治療(脳神経減圧術)
薬剤コントロールが無効なほど進行し、日常生活に支障が継続する場合、唯一の根本治療となる手術が選択されます。即の耳介後方に4㎝の皮膚切開、500円玉大の骨窓をあけて、直接的に三叉神経の圧迫する血管を移動させ、圧迫を解除して痛みを永続的に取り除く治療方法です理事長の手術の場合は、全身麻酔下に2時間半ほどの手術時間で、入院期間は約1週間です。