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正常圧水頭症とは?
正常圧水頭症には、特に脳の病気がなくても生じる特発性と、クモ膜下出血や外傷、脳腫瘍の治療後に生じる症候性のものがあります。脳が収まる頭蓋内には、髄液(ずいえき)と呼ばれる液体が存在しており、脳は髄液に包まれることで頭蓋内で浮いた状態を保っています。髄液は、脳室と呼ばれる脳内のスペースで産生されており、脳と脊髄の周囲を流れて静脈などで吸収されているのですが、何らかの原因によって髄液が過剰に産生された場合、脳を圧迫することがあります。これを「水頭症」と言い、髄液が異常に増えているため、髄液による圧力(髄液圧)は上昇しています。それに対して、慢性化して髄液圧が正常であるにも関わらず水頭症が発生した状態を、正常圧水頭症と言います。
正常圧水頭症の症状
正常圧水頭症の主な症状は、以下の通りです。また、正常圧水頭症の症状は、緩徐に進行する傾向にあります。
歩行障害
症状の中で最も出現頻度が高く、また初期に現れやすいものが歩行障害です。歩行障害の様相としては、足を開き、小股で、すり足で歩くような、失調性歩行が現れることが多いと言われています。また一歩一歩が踏み出しづらくなる、すくみ足歩行と呼ばれる歩行も見られます。
認知症
正常圧水頭症では、認知症様の症状も現れます。具体的には、物忘れの増加、物事への関心・集中力の消失、注意力の低下、思考速度の低下、記銘力(新しく物事を覚える能力)の低下などです。通常の認知症との大きな違いは、上述した歩行障害の出現です。通常の認知症では身体機能は維持されている場合が多いため、認知症症状の出現と歩行障害が同時期に発生した場合は正常圧水頭症を疑います。
尿失禁
正常圧水頭症では、前頭葉の畜尿する機能中枢が障害され、尿意切迫感や尿失禁を生じることがあります。
正常圧水頭症の主な原因
正常圧水頭症の主な原因は以下の通りです。
特発性(原因不明)
正常圧水頭症の原因の中で最も多くを占めるのが、原因不明のものです。原因不明の正常圧水頭症は、特発性正常圧水頭症と呼ばれ、60代以降での発症が最も多く、男女による発症頻度の差はありません。脳の周囲で脳を保護する役割を持つものの1つにクモ膜がありますが、クモ膜には髄液を吸収するクモ膜顆粒という構造があり、正常圧水頭症では、この吸収機能が障害されているのではないかと考えられています。
症候性(他の疾患に続発するもの)
クモ膜下出血などの脳血管障害によるものや、頭部外傷、髄膜炎などによって続発的に正常圧水頭症が生じる場合があります。
正常圧水頭症の検査方法
正常圧水頭症の主な検査には、以下のものが挙げられます。
CT・MRI検査
CTやMRIによって髄液を貯留している脳室の拡大や、脳室周囲の浮腫を描出して判定します。
髄液排除試験(タップテスト)
腰椎穿刺針と呼ばれる針を腰椎部分から脊椎内へ差し込み20~40mlの髄液を排出させます。髄液は脳から脊髄までを包んでいるため、腰椎部から髄液を回収することで脳への圧力を軽減させることができます。髄液を回収したのち数日間症状の変化を確認して、症状が改善されれば正常圧水頭症の可能性を強く疑うことができます。
正常圧水頭症の治療方法
正常圧水頭症の主な治療方法は以下の通りです。
シャント手術
頭蓋内に溜まった過剰な髄液を永続して抜くための管を埋め込み、脳の機能を回復させる手術です。シャント手術は、管を埋め込む部位によって3通りの方法があります。手術は全身麻酔下に1~2時間で行われます。
脳室-腹腔シャント
頭部と腹部を交通させる方法です。管の一端を頭部に開けた穴から脳室内へ挿入し、もう一方を切開した腹壁から腹腔内(腸などが収まる空間)に留置します。脳室内に溜まった過剰な髄液を腹腔内に流すことで髄液圧を下げる治療方法です。
腰椎-腹腔シャント
腰部と腹部を交通させる方法です。管の一端を腰椎の隙間から脊椎内に挿入し、もう一方を腹腔内に挿入します。髄液は脳と脊髄をまとめて包んでいるため、腰椎部から髄液を回収し腹腔内に流すことで脳への圧力を軽減させます。
脳室-心房シャント
頭部と心臓を交通させる方法です。管の一端を脳室に挿入し、もう一方を頚部の静脈から心房(心臓の上部)に挿入します。正常な場合でも余分な髄液は静脈から回収されて心臓へ流れるため、頭部から心臓までの高速道路を敷くイメージです。