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頭部外傷とは?
頭部外傷とは、頭部に外力が加わることで生じる損傷のことです。たんこぶで済むような軽いものから、頭蓋内に大出血を来すような命に関わるものまで、外力の強さや損傷の部位により、病態や予後は大きく異なります。
なかには、頭部外傷を受けた直後は見た目上、何もないように見えても、内部では損傷を負っており、時間が経った後に症状が現れることもあるため注意が必要です。
頭部外傷を引き起こす外力には、交通事故、転倒・転落、打撲といったものがあります。
頭部外傷の主な症状
- 頭部外傷後、吐き気がする
- 嘔吐を繰り返す
- 頭部外傷前後の記憶がない
- 意識が朦朧としている
- 頭の痛みがどんどん酷くなる
- ぶつけた部分のたんこぶが治らない
- 血混じりの液体が耳や鼻から出る
- 手足を動かしにくい
- 物が見えづらい
- 痙攣が起きている
- 1ヶ月前くらいに頭をぶつけたが、最近「手足が動きにくい」「言葉が出にくい」「物が見えにくい」などの症状が出てきた
など
脳を損傷した可能性が低い軽度な頭部外傷(たんこぶはできたが他の症状はないなど)の場合、通常治療は必要ありません。ただし、傷口が深い場合は、感染症に罹患しないように治療を受ける必要があります。
スポーツ時の転倒・衝突や交通事故などで頭をぶつけた場合は、脳が深刻なダメージを受けている可能性があるため、自覚症状がなくてもできるだけ早めに受診してください。
また。ボクシングやラグビーなどのコンタクトスポーツにおいては、頭部外傷後のスポーツ再開に脳の評価が大事とされています(セカンドインパクト症候群)。
また、脳損傷の可能性が高い場合は、脳内に血腫などがないか、頭蓋骨の状態などの異常の有無をMRIやCTなどの検査をして確認します。
頭部外傷の原因
頭部外傷の原因には以下のようなものがあります。
・交通事故
・転倒・転落
・スポーツ中の転倒・衝突
・職場(工場や建築現場)などでの事故
など
特に頭部外傷の原因のうち、約半数が交通事故とされ、頭部外傷による死亡に関しては、交通事故が約60%を占めるとされています。しかし、今年の高齢化社会においては、高齢者の転倒事故が多くなっています。
外傷の多くは、直接的な外力によるものです。しかし、頭に直接何かがぶつからなくても、脳が損傷することがあります。例えば、乗り物の突然の減速や激しく揺さぶられた場合、軟らかい脳が硬い頭蓋骨にぶつかることで、損傷を受けることがあります。こういった場合、外から見るだけでは損傷を受けているかどうかは分かりません。
頭部外傷の検査
頭部外傷の検査は以下を実施します。
レントゲン検査
レントゲン検査では頭蓋骨折の有無などを確認します。
CT・MRI検査
CT検査やMRI検査は、脳損傷の可能性がある場合に行われます。MRI検査はCT検査よりも、微小な出血や脳の腫れなど、わずかな脳挫傷でも検出することができます。また同時に行うMRAによって脳動脈瘤や血管狭窄病変が偶然に発見され、命びろいされる方もいらっしゃいます。頭部外傷が生じてすぐの時期には、出血性病変や骨折がより診断しやすいCT検査をまず実施します。
小児の検査について
小児の場合のX線(レントゲン、CT)検査は被曝によるリスクがあるため、本当に検査が必要かを見極める必要があります。重症例の場合は迷わず検査を行うことはもちろん、不要な時に検査をしないようにしなければなりません。
2歳以上の小児の頭部外傷では、診察後
・精神状態が正常
・意識消失がない
・嘔吐がない
・傷害の機序が重度ではない
・頭蓋底骨折の兆候がない
・重度の頭痛がない
・保護者の方がお子様を見る限り異常がない
など
といった場合には、CT検査を行わない場合もあります。
頭部外傷の治療方法
頭部外傷による損傷と程度により行われる治療はそれぞれ異なります。
頭部外傷による出血
外傷により皮膚が裂け、頭皮からの出血が多くて止まりにくい場合は、止血と縫合を行います。
頭蓋骨の損傷
損傷の種類 | 損傷について | 治療 |
---|---|---|
線状骨折 | 頭蓋骨が線状に折れたもの | 治療の必要なし |
縫合離開 | 頭蓋骨の骨の継ぎ目が開くもの | 治療の必要なし |
陥没骨折 | 頭蓋骨が骨折して陥没したもの | 脳を圧迫したり、美容上圧迫したりする場合は手術 |
頭蓋内の損傷
頭蓋内とは、頭蓋骨の内側の部分です。頭蓋骨と脳の間には軟膜、クモ膜、硬膜の3枚の膜があり、これらの膜の間や脳の中に出血が起こることを頭蓋内出血と言います。
直接的な強い外力や加速による力や回転が加わると、頭蓋内出血を生じることがあります。
頭蓋内出血の損傷の種類と治療は以下の通りです。
損傷の種類 | 損傷について | 治療 |
---|---|---|
急性硬膜外血腫 | 頭蓋骨と硬膜の間に出血するもの | 症状が軽い頭痛や嘔吐だけで血腫が少量の場合には、入院での経過観察や与薬、点滴を行う 症状の程度や血腫の大きさにより、緊急に開頭血腫除去術を行う |
急性硬膜下血腫 | 硬膜とクモ膜の間に出血するもの | 血腫が少量の場合は、与薬や点滴を行う 症状の程度や血腫の大きさにより、緊急に開頭血腫除去術を行う |
(外傷性)クモ膜下出血 | クモ膜と軟膜の間(クモ膜下腔)に出血するもの | 通常手術は行われず、出血は自然に吸収される |
これらの病態は単独で存在することもありますが、混在していることもよくあります。