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頸椎骨軟骨症(頸椎症)とは?
頸椎骨軟骨症とは、椎体が20歳を過ぎたあたりからの加齢による変性で頸神経を圧迫し、痛みや痺れなどの神経根症や、脊髄も圧迫されて脊髄障害が出現する疾患です。
椎間板ヘルニアの病態と基本的には同様で、症状および病態によって「頸椎症性神経根症」と「頸椎症性脊髄症」に大別されますが、両者が合併する場合もあります。椎間板ヘルニアでは急に症状が出現することも少なくありませんが、頸椎症の場合は徐々に症状が出現することが多いです。しかし時に鞭打ちなどの外傷が誘因となり、急に症状が出現します。
頸椎症性神経根症
頸椎椎間板ヘルニア性神経根症と同じで、頚椎症による骨棘が神経根を圧迫する症状です。しかし骨棘と椎間板ヘルニア両者による神経根の圧迫が原因のことも少なくありません。(参照:頸椎椎間板ヘルニア性神経根症)
頸椎症性脊髄症
頸椎の脊柱管内で、前方から突出してくる骨棘や椎間板、頸椎の亜脱臼や不安定性、後方から肥厚してきた黄色靭帯、時に後縦靭帯の骨化肥厚などが要因となって、脊髄が圧迫され、症状を引き起こします。神経症状は椎間板ヘルニアによる脊髄症と同じで、頸椎MRI検査によって診断されます。(参照:頸椎椎間板ヘルニア性脊髄症)時に腰椎疾患(脊柱管狭窄症)を合併していることもあり、正確な診断には腰椎MRI検査も必要な場合があります。
頸椎骨軟骨症の原因
頸椎は、20歳を過ぎたあたりから加齢のよる変性が始まります。
変性により、
・椎間関節が不安定になる
・椎間板が潰れる
・骨棘(骨の出っ張り)ができる
といったことが生じ、椎間板や骨棘が神経の通り道の方向に飛び出すことや椎間関節を連結する靭帯(後縦靭帯/黄色靭帯)が厚くなることで、脊髄や神経根を圧迫するため症状が出現します。
頸椎骨軟骨症の検査方法
まずは診察の中で、いつからどのような症状か、どのようなときに生じるか、症状の出現に影響する仕事や趣味などを問診します。
次に神経学的診察を行って、症状に一致する他覚的異常所見がないかを確認し、神経症状が脳、脊髄(頸部、胸部、腰部)のどの部位からのものかを診断します。
その後、レントゲン検査およびMRI検査を行って、神経学的に異常にある部位に一致する画像所見の有無を確認します。
・手や腕の痺れや痛みはあるか?
・頸椎を後方へ反らすと症状が増強するか?
などを確認します。
その後、レントゲンやMRIで検査を行います。
レントゲン検査
撮影の際に、方向を変えたり、頸椎を前後屈したりと変化を加えることで、頸椎の全体的な形や変性の程度、関節が不安定、神経のでる孔(椎間孔)の狭窄になっていないかなどが分かります。しかしこの検査では骨の変化しかわからず、確定診断のためにはMRIが必須で、神経症状に一致する神経の圧迫の有無を把握する必要があります。
MRI検査
神経の圧迫がどの部位にどの程度生じているかを正確に把握できます。ただし、MRIは強力な磁場を発生させて撮影するため、体内に特定の金属やペースメーカーなどが入っている場合には使用できない場合があります。
頸椎骨軟骨症の治療方法
頸椎骨軟骨症の治療方法は以下の通りで、頸椎椎間板ヘルニアの場合と同じです(参照:頸椎椎間板ヘルニアに対する治療方法)。
頸椎症性神経根症
頸椎症性神経根症の症状は、神経原性疼痛に対する薬剤で軽減することが多く、時間の経過とともに多くは軽減していきます。
そのため、いきなり手術となることは通常ありません。しかしながら、1,2か月保存的治療を行っても、日常生活や仕事に支障のある症状が継続しているとき、進行性の運動障害があるとき、再発を繰り返している場合などは手術の良い適応となります。
薬物療法
症状が痛みや痺れのみの場合には、まずは、神経原疼痛に治療薬、および通常の痛み止め内服による薬物療法から開始されます。強い症状の場合には短期間ステロイドを投与する場合があります。
ブロック療法
内服では疼痛がコントロールできない場合は、ペインクリニックにて頸椎症性神経根症では「神経根ブロック」を行うことがあります。
神経根ブロックでは、エコーで神経根を確認しながら、その近くに麻酔薬を注射します。
麻酔薬の鎮痛効果は1日で切れますが、神経根の周囲の炎症を抑えることや痛みの悪循環を止めることで、鎮痛効果が1日以上続く場合もあります。
手術治療
先にも言いましたように、1,2か月保存的治療を行っても、日常生活や仕事に支障のある症状が継続しているとき、進行性の運動障害があるとき、再発を繰り返している場合などは手術の良い適応となります。
・薬物療法やブロック療法を行っても痛みにより日常生活が困難である
・麻痺が強い
・手や足に力が入らない
・筋力の低下が見られる
・指で細かい物を掴みづらい
・ある程度の治療期間が経過しても改善が見られない
など
手術の方法は頸椎椎間板ヘルニアの時と同様に、頸椎前方除圧固定術(ACDF)を行って、圧迫されている神経の前方にある骨棘や変性椎間板を除去し症状を消失、軽減させます。
頸椎症性脊髄症
脊髄は末梢神経よりも損傷しやすい神経であり、元に戻りにくい性質もあります。
そのため、脊髄症の場合は症状の軽微な場合を除いて、できる限り早めに治療を開始することが望ましいです。
治療としては、狭くなった脊柱管を広げるような薬やリハビリなどはないため、手術で狭くなった脊柱管を広げる手術の良い適応です。手術は神経根症と同じく、前方除圧固定術(ADDF)、あるいは後方除圧術(脊柱管拡大術)が行われます。
薬物療法/ブロック治療
合併する神経根症に対しては、まずは内服治療を行います。それでも痛み・しびれがコントロールできない場合は経椎間孔硬膜外ブロックを行う場合があります。しかしながら運動障害を呈するもの、進行性および重度の脊髄症は早急な手術加療は必要ですので、手術までに脊髄を守る目的で短期間ステロイドを投与することがあります。
手術治療
基本的に脊髄症を呈した場合は手術の適応です。
手術には1)前頸部から進入する前方除圧と、2)後頚部から進入する後方除圧術があります。
1前方除圧術
2椎間の狭窄病変の場合には前方除圧固定術(ACDF)が低侵襲で有用です。
後方除圧術
3椎間以上の狭窄病変に対しては、後頚部の正中を数センチ~8㎝程度を切開し、頸椎の棘突起と椎弓に付着する後頚部筋群を剥がして、狭窄部位の頸椎の棘突起および椎弓を露出、棘突起正中と椎弓外側に2~3㎜の溝を掘り、両側椎弓を後方に開くようして脊柱管を拡大させます。開いた椎弓の間には人口骨スペーサーを挟んで固定して椎弓を再形成(椎弓形成術)して、筋肉、皮膚を縫合します。脊髄を広い範囲で除圧できます。