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脳動静脈奇形とは?
脳動静脈奇形とは、脳血管の発生過程において、動脈が直接静脈につながってしまうような、脳内に異常な血管の塊を形成する疾患を指します。脳動静脈奇形は、胎児期(出生前)に生じたものですので、小児期の脳卒中の原因となり、その他、てんかんや脳虚血症状を生じます。また、成人になってから発症することもりますが、長く無症状で経過することも少なくありません。
異常血管の塊を構成する血管は、正常な血管の構造とは異なるため、破裂して出血を起こしやすいという特徴があります。出血した場合、多くは脳出血となりますが、稀にクモ膜下出血として発症することもあり、クモ膜下出血の原因のおよそ10%を占めると言われています。
年齢別に見ると、出血は30代が最も多いと言われているため、比較的若い年代で脳出血が生じた場合には、脳動静脈奇形の可能性が考慮されます。
脳動静脈奇形の症状
脳動静脈奇形は、無症状で経過することも多いために、もっていることを知らないで生活する中で、急に症状を呈します。出血を起こした場合、部位や出血の度合いによって様々な症状を引き起こします。また、脳動静脈奇形の発生した部位の周囲は慢性的な乏血状態になることがあり、結果として麻痺や痙攣発作を引き起こすことがあります。脳動静脈奇形によって起こり得る症状には、以下のものなどが挙げられます。
- 頭痛
- 痙攣発作
- 神経学的症状(感覚異常・麻痺・言語障害など)
- 脳出血による意識喪失や昏睡
- 記憶障害
- 認知症様症状
など
これらの症状は、脳動静脈奇形からの出血や、周囲の脳組織への血液供給不足、血流速度の異常などによって引き起こされると考えられています。また、脳動静脈奇形から出血が起きた場合、再出血するリスクも高いとされているため、できる限り早く治療を受けることが重要となります。
脳動静脈奇形の主な原因
脳動静脈奇形の具体的な原因は不明ですが、先天的な遺伝的要因と環境要因が影響する可能性が考えられています。また、脳血管系の発育中の問題が脳動静脈奇形の形成に繋がることもあります。
脳動静脈奇形の検査方法
脳動静脈奇形が疑われる場合、以下の検査を行い血管奇形の有無を評価します。検査によって異常血管の塊や、そこへ流入する動脈、流出する静脈が描出された場合、確定診断となります。
MRI検査
最初に行うスクリーニング検査で、脳動静脈奇形の有無、詳細な形状や位置を評価する際に用います。
CT検査
脳動静脈奇形からの出血や、異常な領域を可視化するために使用します。
脳血管造影検査(DSA)
小さな脳動静脈奇形の場合は、DSA検査で初めて診断がつく場合が少なくありません。MRI検査ですでに診断されている場合は、血管構造や、血流パターンを明確にして治療方針を決定するために造影検査を行います。
脳波検査
てんかんの有無、生じる可能性を評価するのに使用されます。
脳動静脈奇形の治療方法
脳動静脈奇形の治療には、以下のものが挙げられます。
開頭摘出手術
開頭摘出手術では、異常血管の塊を直接的に切除します。将来の出血リスクを予防することができるため効果の高い治療方法ですが、脳自体に切開を加えるため、侵襲の高い治療方法であるとも言えます。
脳血管内治療(塞栓術)
血管の塊に流入する栄養動脈をコイルで塞栓させると同時に、異常血管のある部位に液体状の塞栓物質(血管を詰まらせる物質)を流し込み、段階的に血管を塞ぐ治療方法です。比較的小型の脳動静脈奇形の場合は、塞栓術のみでも完全な治療を行うことが可能と言われていますが、異常血管が大きな場合は、上述の開頭術や下記で解説する定位放射線治療と組み合わせて治療を行うことが有効です。
定位放射線治療
強い放射線を脳動静脈奇形部に局所照射することで、異常血管を次第に閉塞させる治療方法です。切開を加えないことから、侵襲としては比較的低い治療方法であると言えますが、効果に時間がかかり、その間には出血などの症状を生じることもあります。
病巣が比較的小さい場合や、開頭摘出術による神経合併症が懸念される場合などに適応されることが多いですが、ある程度大きな異常血管がある場合、定位放射線治療のみで完治を目指すことは難しいため、開頭術や血管内治療と併用して治療を行います。また、放射線を照射してから血管が完全に閉塞するまでには数年程度かかることや、閉塞が得られたのちでも放射線の影響による脳の浮腫や壊死を生じる可能性がずっと継続します。